何でも無邪気に話してくれた幼児期とは違い、子供が小学校に上がると、思春期にかけて段々と子供とのコミュニケーションが難しくなります。
学校の様子を知りたくて子供に聞いても、「別に」「普通」としか答えない。
友達や先生のこと、進路のことなど、聞きたいことはいっぱいあるのにうまく会話ができない…という親御さんは多いのではないでしょうか?
「もし学校で何か困ることが起きていたらどうしよう?」
「悩みを一人で抱えていたらどうしよう?」
と不安になりますよね。
そんなとき、どうしたら子供に「話したいな、相談してみようかな」と思われる親になるのか、それには子供とコミュニケーションを取るときのちょっとしたコツがありますよ。
モンテッソーリ教育とチャイルドコーチングの指導者で、1児の母でもある筆者がお伝えしていきます。
親と話したがらない子供、その原因は?
まず、子供が本音や悩みを親に話したがらないのは、どういう気持ちからなのでしょうか?
その理由を考えてみましょう。
- 親がいつも不機嫌でイライラしている
- どうせ話しても「あなたのこういうところがいけないからよ」と決めつけられる
- 話しても理解してもらえない・信じてもらえない・受け止めてもらえない
- 前に相談したときに、まともに取り合ってもらえなかった
- 大人の物差しで測られ、親の考えを押し付けられる
- 自分にとっては繊細で複雑な問題なのに、分かったようなことを言われるのがいや
- 自分が望まない行動(先生や友達の親に連絡されるなど)を取られ、いじめなどの現状が悪化するのが心配
- 親に心配をかけたくない・迷惑をかけたくない・がっかりさせたくない
- 現実を認めたくない
- どうしたいのか、自分でも自分の気持ちがよくわからない
親御さん自身も、きっと子供の頃にこんな感情を抱いたことがあるのではないでしょうか?
私も子供の頃に「今の気持ちを自分が親になっても絶対に忘れないでいよう」と思っていました。
でも大人になって世界が広がったり、効率の良い問題解決方法を知ったりするうちに、自分では子供の頃の気持ちを覚えているつもりでも忘れてしまっているのでしょうね。
子供が話してくれなくなっても、思春期(反抗期)の子供なら親のことがただ「嫌い・ムカつく」という感情だけで一時的なことも。
でも、もし小学生のうちから話さなくなってしまったら、親の対応に何か話しにくい原因があるのかもしれません。
思春期に入る前に、親子の信頼関係を改善しておいたほうが得策ですよ。
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子供とのコミュニケーション
『話したくなる親』になる4つのコツ
では、どうしたら子供が何でも話したくなる親になれるのか、普段の心がけから実際に話を聞く際のテクニックまで、4つのコツをご紹介します。
子供が話したくなる親になるコツ
1つずつみていきましょう。
① 普段から子供に『感謝・ねぎらい・共感』の言葉を伝えよう
いくら会話のテクニックを学んでも、子供が話をしにきてくれなければどうにもなりません。
子供が「親に話したいな、相談してみようかな」と思うには、普段から親子の信頼関係を築いておくことが大切。
それには、常日ごろ子供に『感謝・ねぎらい・共感』の言葉がけを忘れずにすることが大切ですよ。
まず「ありがとう」という言葉は、人と人とのコミュニケーションにおいて一番大切で、かつ最も効果のある魔法の言葉。
「~してくれてありがとう」
「助かったよ」
と事あるごとに子供に伝えるだけで、子供は『認めてもらえている』『愛されている』と感じます。
忙しくてもきちんと目を合わせて笑顔で言うのがポイントですよ。
また、
「いつも頑張ってるね」
というねぎらいも、『ちゃんと自分を見てくれている』と感じてもらう大切な言葉がけです。
そして、子供が何気ないことでも話しかけてきたときには、たとえ「ん?」と思う内容でもすぐに否定や批判をせず、まずは共感を示すようにしましょう。
共感を示す方法には、
- 相づちを打つ
- ミラーリング
(相手の言葉の一部を繰り返す)
があります。
ミラーリングする際は、話の中の出来事の部分ではなく、
「嬉しかったんだね」
「嫌だったんだ」
という感情の言葉を拾って繰り返すのが効果的です。
このように普段から、子供の気持ちが楽になるようなコミュニケーションを取っておくことが、いざ何か悩んだときに親に相談しようと思ってくれるかどうかの分かれ目。
普段、親からの感謝やねぎらいや共感の言葉がなく、話しかけてもそっけなかったり目を合わせなかったり、否定的な言葉ばかりなのに、
「さあ、何を悩んでいるの?話してごらん」
と言われても、子供は絶対に本音を打ち明けてはくれませんよ。
いつも外で頑張っている子供にとって、家の中が心安らげる安全基地になるような信頼関係を作っておきましょう。
② 話を聞く時の主人公は、親ではなく『子供』
さて、次はいよいよ子供が悩みを打ち明けてくれた時のコミュニケーションの方法です。
話を聞く時に大切なポイントは次の通り。
子供の話を聞く時のポイント
- 口をはさまず最後まで聞く
- 穏やかな表情で、子供の目線の高さに合わせて聞く
- 相づちを打つ
「うんうん。そうだよね。なるほどね。それでそれで?どんな風に?どうなったの?どう感じたの?」 - 途中で「でも」と否定したり、「それはおかしい」と大人の物差しで批判したりしない
- 話し終わったら、まず感謝とねぎらいを伝える
「話してくれてありがとう」
「大変だったんだね」
「今までよく頑張ったね」 - 親の正しい結論を押し付けず、
「どうしたらいいと思う?」
「どうしていきたい?」
と子供の考えを聞き、答えをゆっくり待つ - 「こう考えなさい」と考え方を強制しない
見てわかる通り、大切なのはとにかく聞き役に徹すること。
子供が親に現状を伝えたり悩みを相談するのは、別に親に問題を解決してほしいとは思っていないことがあります。
ではなぜ話すかというと、
現状や気持ちを知ってほしい・共有してほしい
話すことでセラピーになる
話すことで思考を整理できる
ただそれだけの場合も。
子供には自分から答えを導く力があり、実は話しながら解決に向かっていることも少なくありません。
だから、親が子供の結論を待たずに自分のアドバイスを押し付けたり、子供が打ち明けた以上のことを無理やり聞き出そうとしたりすると、「次からは話すのをやめよう」と思われてしまうかもしれません。
話しても否定や批判をされない、親の考えを押し付けられず、一緒に考えていこうという姿勢で見守ってくれるとわかれば、
「親はどんな時もどんな問題が起きても、味方になって聞いてくれる」
「自分が嫌なことはしないでくれる」
という将来の信頼につながりますよ。
子供の話を聞く時に、すべての根底にある大事な考え方は、
子供の相談事の主人公は『子供』であり、決して親ではないということ。
当たり前と思うかもしれないけれど、親は子供との会話を自分がコントロールしたいと無意識に思ってしまうことがあります。
どこでアドバイスをしようかな。
どこで自分の成功談を話そうかな。
どう答えれば「さすがお母さん(お父さん)すごいな、頼りになるな」と尊敬されるかな。
この前言おうと思って言えなかった〇〇の話を、どこかで組み込めないかな。
このような親の気持ちを子供は簡単に見破り、「結局親は自分の考えを押し付けたいだけだ」と思ってしまいます。
さらに最悪なのは、話した後に親が勝手に、
「あとは全部こっちでうまくやるから、任せなさい」
(さて、この問題をどうやって解決していこうか。自分の手腕にかかっているぞ。きっと成功してみせる。)
と子供の悩み解決を親のタスクにしてしまい、子供の気持ちを置き去りにして方々に手を打ち解決したつもりになってしまうこと。
悩み相談に限らず、子育てにおいて
子供の力を信じ、子供に任せる
親はサポートに徹する
という心構えでいることはとても大切です。
親は、子供の監督でもプロデューサーでもなく、サポーターであるべき。
「大丈夫だよ」
「何度やり直してもいいんだよ」
「あなたがいてくれるだけでお母さん(お父さん)は幸せだよ」
と温かい言葉をかけながら、子供が安心して問題に立ち向かっていけるように応援しましょう。
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③ アドバイスをする時は、主語を"You"ではなく"I"にしよう
子供が本音や悩みを打ち明けてくれて、最後まで口を挟まずに聞き、「話してくれてありがとう」というところまできました。
「それであなたはどう思ったの?」
「どういうところが嫌だと思った?」
「これからどうしたらいいと思う?」
と子供が自分で解決するのをサポートする一方で、親としては自分の経験値から
(こうしたらいいんじゃないかな)
(相手も悪いけど、うちの子もここを直さないといけないな)
とアドバイスしたいことが必ず出てきますよね。
でもそこで、
「もっとこうしたほうがいいんじゃない?」
「あなたもこういうところが悪いよ」
と言ってしまうと、子供は再び心を閉ざしてしまいかねません。
そんな時に、コーチングの手法で『 I (アイ) メッセージ』というのがあります。
あなた(You)を主語にするのではなく、私(I)を主語にして、
「私は~するといいと思うな」
「今の話を聞いて、私はあなたも〇〇という考えを変えるといいんじゃないかなと思ったよ」
という伝えかた。
あなた(You)を主語にすると「責められている・考えを強要されている」と感じて反発心を持たれてしまうことも、私(I)を主語にするだけで「あくまで一つの客観的な意見」として冷静に受け止められやすくなります。
そして親の意見を聞いたうえで、最終的にどうするかを判断するのは『子供自身』。
その時に結論が出なければ、また時間をおいて「この間の話、どうなった?」と聞いてみましょう。
決して、
「こうしなさい」
「早くしないと〇〇になっちゃうわよ」
と急かしたり親の考えを押し付けたりしないようにしましょう。
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④ 子供の気持ちが明るくなる言葉を使おう
子供とのコミュニケーションの最後のポイントは、言葉の使いかた。
子供は、親が普段使う言葉にとても大きな影響を受けます。
親の言葉の選び方、要するに考え方の傾向が、子供の人格や一生にわたる思考の基盤を形成していくと言っても過言ではありません。
たとえば、
「今日、こんな親切な人に会ったよ」
「これはいいニュースだ、嬉しくなるね」
「今日はいいお天気で気持ちがいいね」
『楽しい・ワクワクする・おいしい・素晴らしい・最高・~のおかげ』
といった明るい言葉をたくさん浴びた子は、挑戦する心・ポジティブな心・人を認める寛容な心が育ちます。
逆に、
「あの人は本当にどうしようもない」
「何もいいことがない、本当に生きづらい世の中だよね」
「最近雨ばかりでツイてない、気分が悪いよ」
『ムカつく・つまらない・疲れた・やる気が出ない・最低・~のせい』
といった否定的な言葉をたくさん浴びた子は、自己肯定感が低く、ネガティブな心・人を批判する心を強く持ってしまいます。
もし親もママ友や職場の同僚にこんな人がいたら、何だか暗くトゲトゲした気持ちになってしまいますよね。
子供にポジティブな考え方で悩みを乗り越えてほしかったら、親自身がまず肯定的な言葉を使うようにしましょう。
子供との会話の中でも、
「今日何か楽しいことがあった?」
「その中で良かった点はどんなところ?」
と、明るい気持ちになるような質問をしていくと、子供の思考回路も徐々に好転していきますよ。
ただし、子供が本当に悩んでいるときや極限まで落ち込んでいるときに、無理に
「もっと前向きになりなよ」
「ネガティブな考え方はやめたら?」
と考え方を強要するのはNG。
ポジティブ思考は親が強制するものではなく、あくまで普段の親の言葉や考え方を子供が感じて、自分の中で徐々にシフトしていくものです。
子供が落ち込んでいるときは、きちんと目線の高さを合わせて、まずはしっかり共感することにつとめましょう。
まとめ ~親子のコミュニケーションは子供の最後の砦
親子のコミュニケーションがうまくいかないというご家庭は、案外多いのではないでしょうか。
「まぁ、子供ってそんなものだよね」
「親には話したくないんだろうな」
とあきらめている親御さんも多いと思います。
親は世界が広く、知り合いも多く、愚痴を話せる相手やストレスを一緒に発散してくれる友人がたくさんいるでしょう。(もちろん個人差はありますが)
でも、子供はまだそこまで交友関係が広くなく、周りにどう思われるかを気にする繊細な年頃なら、本音で話せる相手はそうたくさんはいないはず。
また家と学校の往復では、ストレスを発散して気晴らしをする機会もなかなかありません。
そんな中で、「家で親に本音や悩みを話せるかどうか」は、とても大きなこと。
子供にとって親子のコミュニケーションは最後の砦なのです。
「どうせ聞いても答えないから」「思春期だから」とあきらめず、少しでも子供が安心して本音を言える親子関係を築いていきたいですね。
大切な子供を本当に大切にできるよう、家を安全基地にしてのびのびと可能性を広げていってもらえるようにがんばりましょう!
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